2016/06/03
蟹座と牡牛座のケンカップルへ
蟹座と牡牛座は相性がいいと言われていますね。
「どちらも家庭を大事にし、安定感を求める。リラックスしたムードで付き合っていけるソフトな相性」などと説明されていることが多いかと思われます。
――それでも酷い喧嘩を繰り返してしまう蟹座と牡牛座について、少しだけ言葉をつらねてみたいと思います。
優しいはずの蟹座と牡牛座がなぜ掴みあいになり、相手を罵倒し、ズタズタになるまで激しくお互いを傷つけあうのか。
端的に言えば「どちらも優しいから」です。
いやそんな馬鹿な、あんな酷いわからず屋な相手のどこが優しい……とプリプリされる向きもあるかとは思います。
あるいは恋人、あるいは家族などの近しい距離に、蟹座/牡牛座の頑固者がいらっしゃれば「あいつは外面が良い」と言いたくなることもあるかと思われます。
「優しいかもしれない! でもわたしに対してだけはちっとも優しくなくなるの!」
――さて、何故そんな風になるのか?
まず、掴みあいの喧嘩をしている相手が、優しいか優しくないか以前に「あなたはとても優しい人」です。
あなたが蟹座であれ、牡牛座であれ、あなたはとても優しい。
周囲から「優しいね」「よく気が利くね」「モノや気持ちを大切にできるね」といった種類の言葉で「偉いね」と褒められてきたのではないかと思います。
この点、蟹座と牡牛座は、周囲からかけられる言葉や評価がよく似ているのです。
「そんな優しい二人が手を繋いだら、優しく温かく安定した家庭を築いていけるはず」――というのも、ケンカップルの実態を知らない周囲の評価かもしれません。
うまくいっている蟹座と牡牛座のカップルもいます。
けれどおたがいにとても優しい筈の二人が酷く喧嘩してしまうとしたら、それはおそらくきっと「優しい気持ちの出どころの違い」です。
牡牛座に星を持っていると「モノを大切にする」という美点が備わるといいます。
美しいもの、高級なもの、手触りや使い心地の素晴らしく良いもの。そうしたものを見つけ出し、手に入れ、大事に大事に、使う。
あるいは――しまい込んで、ため込む。
気が長く、のんびりと動くという牡牛座の傾向に加え、使えるものは長く長く使いたい、そこに収集癖が重なれば「牡牛座はなにやらものをたくさん持っている」
よっぽど「手放すことが得意」や「本当に必要なもの以外は買わない」というサインの星が効いていない限り……牡牛座は享楽的に買って増やしてしまいますし、なかなか捨てられません。「牡牛座あるある」です。
さて、ここに牡牛座の持ち物である「マグカップ」があるとします。
10年も――もしかしたらそれ以上も。
古ぼけてはいますが、人生の傍らにあった陶器のマグカップです。
買ったのは自分、当時はちょうど仕事で忙しかったころ。
閉店間際に飛び込んだスーパーやホームセンター、あるいはドラッグストアなどの小さな日用品コーナー。
本当は、お洒落なインテリアショップでよくよく吟味して選びたい……。
しかし時間はなかなか取れず、必要に駆られ、まずは用を足せばいいと。
そんな経緯で手に入れた素朴なマグカップです。
忙しい時間の合間に掴んだながら、牡牛座の感性を総動員し、売り場の中で一番良いものを選んだつもりです。
色も、形も、手触りや重さも。
自分なりの基準を「まぁまぁ」で満たしてくれ「それなり」に応えて、自分の部屋にいつもいてくれたマグカップ。
完全完璧な理想の逸品ではないながらも、その形状を目にすると「家に帰ってきた」とほっと心和む日もあったかもしれません。
そんなマグカップが少し、ほんの少し、欠けたとします。
マグカップの形状自体は損なわれていません。
「まだ充分に使える」――そうして棚にしまおうとしたところで、一緒に住んでいる蟹座の恋人が、心底忌々し気に舌打ちをし、苦虫を噛み潰すように「棄てろ」と小さく吐き捨てたならば。
「いったいこの人のどこが、気が利いて、優しくて、大切なものを大切にできる人だというのか?」
無理がない話でしょう。
無理がない話だと、思います。
気持ちを司る水の星座の蟹座は、物質を司る土の星座の牡牛座よりも、少しばかり人の感情に対して敏感です。
つまり「相手がどんな気持ちでいるのか」を察する力が強いということでもありますが、突出した能力は時々不幸を呼びます。
「自分がこれだけ、人が何を考えているのかがわかるのだから」
「相手だって自分と同じように」
「あれこれと逐一説明しなくても」
「わかるもの、だろう?」
元から持っている者の傲慢――、「どうやって得たかもわからない能力を、持っていないものにどう教えていいのかもわからない」し、「すごい、羨ましい、特異だ、といわれたところで自分がもっている程度のものは誰でも持っているつまらないものだろう」し、「そもそも、"自分は空気を読む力を持っている者だ" なんて振る舞うこと自体が忍びない――今はつい、"察せるだろう"という傲慢に基づいた端的な行動をしてしまったけども」と。
ここまで論理的に考えられれば、せめて「言葉が足りなくてごめん」の一言も出そうなものですが。
なんとなく「はぁ?何言ってんの?」という、牡牛座のパートナーの歪んだ表情を見ていたら、謝る気分でもなくなって、気分屋の蟹座は不機嫌の谷底に落ち込んでいく――と。
「自分がこれだけ、人が何を考えているのかがわかるのだから」
「相手だって自分と同じように」
「あれこれと逐一説明しなくても」
「わかるもの、だろう?」
(特に、牡牛座ほど人の気持ちの柔らかい部分を大事にできる優しい相手なら)
なお、蟹座の空気を読む能力に相当するのは、牡牛座の審美眼という超能力です。
水のエレメントが気持ちの機敏を読むように、土のエレメントは美の機敏を読みます。他のエレメントからすると、なぜそんなものが読めるのかわかりません。
例えば、ことの中心にあるマグカップの「正確な価値」を即座に判断できるのは間違いなく牡牛座です。――……が、それを説明なしに他のエレメントに伝えるのは至難の業かもしれません。
さて、蟹座に星を持っていると備わる美点は「大切な人を大切にする」ことです。
「割れたカップを使い続けて、怪我をすると危ないから捨てろ」
蟹座はシャイで、無口で、照れ屋で、傲慢で、大事な時に言葉が足りない。
望んだ答えは「そうだね、危ないから捨てようと思う」だったのでしょう。
……――叶うならば「(わたしを大事にしてくれて)ありがとう」付きの。
周囲からの評価が似ていても、蟹座と牡牛座の優しさの出どころは違います。
そして、牡牛座と蟹座は「自分の優しさ」に自信がある傾向が強いようです。
あるいはそれを褒められて、伸ばされてきたからかもしれません。
あるいは絶対に失いたくない執着心がそうさせるのかもしれません。
両者ともに「パートナーとして頼もしい人」という評価を得やすいです。
家を守って後顧の憂いを断つ――どちらも守備、防衛を得意とするサインです。
ここの二つのサインが強くぶつかると「周りから浴びるほど貰っているはずの"優しい"や"頼りになる"といった評価が、このパートナーからは何故か得られない」という困惑に襲われることが、あります。
牡牛座の守備が「全てを完全に守り抜く」であるならば、蟹座の守備は「犠牲を伴っても優先順位をつけて守り抜く」と、そこに差があります。トカゲの尻尾を切れるのは蟹座の性質、完全降伏するまで退かない頑固さは牡牛座の性質です。
蟹座にとって優先順位の頂点が「牡牛座というパートナー」たった一人であるならば、牡牛座にとって「蟹座と暮らす空間のすべて」に明確な優先順位はありません。
たいていの場合、蟹座のヒステリーは「このままでは牡牛座が危険だ」からはじまります。「コップが欠けている。怪我をするかもしれない」から、あとは個人の信条に則り、食べるものに気をつけろ、清潔に保て、あれをしろ、これをするな……引っ叩きたくなるほど、細かい過保護な注文が矢のように飛んできます。
要約するならば「自分を粗末にするような振る舞いは一つも許さない」と。
たいていの場合、牡牛座がそれを受け止めて抗戦する側になります。
牡牛座には守るべきものがあります。12星座の内で一番の頑固と言われる牡牛座が守りたいものは、手の中にあるものすべて。生活雑貨、日用品、買いだめした予備、備品、管理しきれないほどに溜め込んだコレクション――
「古い冷蔵庫を使っているのは電気代が嵩むとは言っても、そもそも新品を買ったら出費が増えて貯金が減ってしまうのだし……」
「(下手に火災や故障、掃除の手間のリスクを負うくらいなら)……捨てろ!!」
「自分のことは無頓着で適当な癖になんでそんなこと言うの!」
「(大事なのはお前であって)……俺はいいんだ!!」
「理不尽だ!!!!横暴!!!」
「五月蠅い頑固者!!!!」
牡牛座も、蟹座も、優しい考え方をするサインです。
もし、喧嘩をしながら「相手の優しさを肯定することは、自分自身のアイデンティティを破滅させてしまう。絶対に折れてはいけない戦いを毎日挑まれている」と考えているのだとしたら、12星座でNo1,2を争うほど防衛戦を得意とするサイン同士が、己の譲れないものを守るために死闘を演じている状態です。
自分が「守りたいもの」がなんなのか。自分の優しさを表に出す方法は過不足なく適切か。相手へのぶつけ方に反省の余地がないか。自分とは形の違う「優しさ」を尊重できているか。
牡牛座が淹れた美味しい紅茶と、蟹座が選んだおやつをつまみながら、英気を養いつつ、少しばかり顧みてみるのも一考に値するのでは――と、ここで筆をおきます。
引き離そうとしても、外からの力ではなかなか離れない相性の組み合わせです。
――防衛戦は、ものすごく得意な二人故に。
ケンカップルに幸あれかし。
追記
蟹座自身も「ため込む」性質は持っています。
古いアルバムや思い出の品、記念に買ったもの、貰ったもの。そうしたものは譲らず、手放そうとしません。もし、そうしたものを手放す蟹座がいるとしたら「それを見ても、喜ぶ人は自分の他に誰もいない」という理由で手放すことが多いようです。
蟹座や牡牛座が古いものを取っておく根本的な理由は「それがあることで、誰かが幸福/有用である」という隠しパラメーターがあり、宛名のない、まだ見ぬ受け取り手へのプレゼントをいっぱいに抱えている状態に陥っていることが多いでしょう。
――もし蟹座と牡牛座のカップルで、家の中に不要なものが全く存在せず、ミニマリズムに傾倒し、最小限まで削ぎ落すことに心血を注いでいるようなケースがあったら、ぜひ教えてください。
追記2
喧嘩してもなんだかんだ仲のよいカップル向けに書いたつもりです。
DVは犯罪です。そういうのは絶対に我慢しないこと。